21/04/13

最高気温が夏の早朝みたいな暖かさで、すきなバンドのグッズ、お気に入り裏起毛パーカーで出勤したものの扉一枚向こうは風が冷たかった。
だがあと十分で駅に着かないと行けないわたしは短い足をなるべくはやく動かし、なんとか九分で改札前へとたどり着いた。今年初めて汗をかいた。改札から乗り場までが長いため、人がいない地下通路を走った。階段を駆け上ると、いつも制服で溢れるホームにはスーツ、スーツ、終わったみたいなジジイ、スーツ、いつものおばさん、スーツ、わたしだけ
とにかくいつも声がでかいだけの女の子や男の子がいないだけでかなりストレスがなかった。職場に入っても人がいなくてびっくりした。春休みが終わったからだろうか?それにしても退勤まですごく静かだった。

勤務中、店の外から「わかんないわかんないわかんないわかんない!」と子供の泣き叫ぶ声が聞こえ、統失の症状に苦しんでいた自分と重なり気持ち悪くなって、同時にすごく心配になった。業務中だよ〜という顔をしながらその子を見に行ったところ、四歳くらいの男の子がイヤイヤとかわがままとかじゃなく、パニックを起こしているんだとわかり、とても焦った。すぐに父親らしき人がその子供を抱きしめた。抱き上げるのではなく、床に膝をついて抱きしめていた。しばらく抱きしめたのち、「大丈夫になれた?」そう父親らしき人が聞くと、「なったあ」と子供が言った。涙は頬に流れるまま止まっていて、口角があがり、両腕が大きな背中をぎゅっと抱きしめていた。安心した。この一分程、数人が自分とこのふたりを挟み、通り過ぎた。あの子が今日も明日も不安にならずに眠れますように。と心の底から願った。

抱きしめてくれて、大丈夫?と、大丈夫。と、伝えてくれる人間が近くにいるということはとても幸せで救われること、それなのに自分には父親も母親もいなくて抱きしめてくれる友人も恋人もいない あの子供の安心を願いつつ自分には何も誰もいないことに絶望し、トイレに駆け込み少し泣いた。

本当にいくら考えたって自分に救いはなく、自殺をしたいというよりはこの無駄な人生をいち早く終わらせたい